Vol.21印刷デザインキーワード: 記憶色 寒色 暖色 色温度 ケルビン

色の温度が引き起こす不思議な力。

たとえば、太陽の光の下で見たポスターを夜、
蛍光灯の下で見たらなんとなく印象が違う。そんな経験はありませんか?
色は組み合わせや光の具合でその表情を微妙に変化させます。

日本人が好きな花のひとつ、桜の花びらは実は鮮やかなピンクではない。
部屋のインテリアの色次第で体感温度は変化する。色は使い方次第で、より効果的な演出をすることができます。
今回は色の不思議、心理的効果をご紹介します。

年に一度一週間ほど、春の季節にだけ咲く花、桜。
その一瞬の華やかさと散りゆくさまのはかなさが、古くから日本人の心をとらえてきました。

桜の花といえば誰もが華やかなピンクを想い浮かべます。
しかし実際には微かな色、それも白に限りなく近い淡いピンクです。

これは実際の色よりも、その特徴的な色が強調されて記憶に残る、
記憶色(あるいは常識色とも)」という現象によるもの。

このことにより桜の色は鮮やかなピンク色だという思い込みが生まれるのです。

カラー印刷の製版段階においては、あらかじめこの記憶色を考慮し、人の記憶にある色に近づけることで、本物よりも本物らしい味の印刷物をつくることができます。

空は空らしく、桜は桜らしく、という訳です。

もうひとつ色の面白い性質に、「寒色」「暖色」があります。

青や緑など見た目が冷たく、クールな印象を与える色が「寒色」、
赤や橙、黄など暖かく明るいイメージを与える色が「暖色」です。

この色の違いは感じる温度に影響を及ぼすため、さまざまな形で暮らしの中に取り入れられています。

たとえば、扇風機の羽根にはブルー系の色を使うことで、より涼しさを感じられたり、インテリアを暖色系でまとめることで暖かなイメージを感じさせたり。
寒色と暖色を使い分けることで、最大3度の心理的な温度差を感じるとも言われています。

また、色を見るうえで「色温度」も重要な要素のひとつ。

ものを見るためには光が必要なことは周知の事実ですが、この光源の色味を温度の数値で表現したものを「色温度」と言います。

ろうそくの炎は芯に近いほど赤く温度が低い、上の部分ほど青白い色で温度が高い。
このように色と温度には密接な関係があります。

この色温度の単位をK(ケルビン)で表わします。

色温度は、数値が低いほど赤色光の量が多く赤みがかった光で周りを照らし、数値が高いほど青色光の量が多いため青みがかった光で周りを照らします。
つまり色温度の低い照明を使うことで、寿司屋なら魚の赤身をよりおいしく引き立て、バーなら落ち着いた雰囲気を醸し出すことができます。

逆に色温度が高い照明を使用すれば、先進的でクールな印象を演出することができます。

色を見るために最適な光量として、日本印刷学会は推薦標準光源を5000Kとしています。

この数値は正午の平均光と同程度の明るさ。
他に40Wのタングステン電球は2700K、白色蛍光灯は4300K、昼光色蛍光灯は6500K程度です。

適切な環境下で色を見なければ、刷り上がってきた印刷物を見た時に、色校正と微妙に違うなんてことも。

人は見た目じゃありませんが、印刷物は見た目も重要。

色の不思議なパワーを上手に利用して効果的な印刷物づくりを心掛けたいものです。

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