Vol.96印刷キーワード: 凸版印刷 PRESS ゲタ記号

最も歴史のある印刷方法

その原理は判子と同じ。最も歴史のある印刷方法、凸版印刷。

現存する世界最古の印刷物「百万塔陀羅尼」やグーテンベルグが印刷した「四十二行聖書」。
これらを印刷した方式が凸版印刷です。原理は印鑑と同じで、凹凸のある版の凸部分にインキを乗せて紙に転写するだけ。
今回は、この凸版印刷についてご紹介します。

子どもの頃、イモ判を作った経験がある方も多いのではないでしょうか。

実は凸版印刷の仕組みも、このイモ判と同じ。
版材に凹凸を作り、凸部にインキ等をつけて紙を押し当て写し取る印刷方式です。

古くは7世紀頃の中国、木の板に文字や絵を彫って版を作った木版印刷が、凸版印刷の始まりだと言われています。

11世紀には陶器の活字が使われるようになり、15世紀になるとグーテンベルグが金属活字を利用する印刷機を開発。
ここから近代的な印刷である活版印刷が始まりました。

ちなみに印刷時にインキを写し取るために圧を掛けることから、印刷のことを「PRESS(プレス)」と呼ぶようになります。
その後、「新聞」や「報道」の意味にも使われるようになりました。

代表的な凸版印刷として、活版印刷やフレキソ印刷、シール印刷があります。

活版印刷

活版印刷の特徴は、その版の作り方にあります。
必要な活字を拾い出し(文選)、それをレイアウトどおりに並べ(植字)、印刷版を作成。活字は再利用でき、木版のように彫る必要がないので、印刷の利便性が飛躍的に高まりました。

しかし空白部分も専用の部品(インテル、クワタなど)を組んで作成しなければならないため、プリプレス工程に非常に手間と時間が掛かります。また版の重量や保管スペースの問題、膨大な書体の活字を用意しなければならないなど、デメリットもあったため、現在ではほとんどオフセット印刷に置き換えられています。

一方、印刷した際に加える圧力で活字よりインキがはみ出して印刷されるマージナルゾーンという現象、オフセット印刷と比べて印刷面が立体的に見えること等、近年は独特の趣を再評価して、あえて活版印刷を採用する動きも出ています。

フレキソ印刷

感光性の樹脂で作成した凸版に、セラミック製のアニロックスローラーと呼ばれるインキ調量ローラーを使って均一にUV硬化インキを供給して印刷する方式。柔らかい素材や平滑でない素材にも比較的精細な印刷が可能です。
包装用カラーラベルや段ボールへの印刷などに使われています。

シール印刷

樹脂凸版を使って印刷します。最近は小ロット多品種に対応でき、ロスが少ない「間欠輪転方式(※)」の活版印刷機が主流となっています。
※版胴が一回転して印刷する度に厚紙をいったん逆送りさせて印刷ピッチを調整する方式

活版印刷のウラ話「(〓)ゲタ記号」

活版印刷で組版をする際、必要な活字が見つからない時、とりあえず他の活字を裏返しにして組み付けます。DTPと違い物理的にそのスペースを埋めておかないと版ができないためです。
その際、活字の裏面は鋳造したときの名残で、ゲタの二枚歯のような形になっており、このまま「ゲラ」(組版を仮に写し取った校正用紙)にすると〓の形が印字されました。
これをゲタ記号と呼び、現在でもフォントや文字コードで表現できない文字等があった場合に使われています。

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