Vol.43印刷キーワード: 紙幣

小さな芸術品、日本の紙幣。

精密に、精巧に描かれた絵画のような肖像画。
それは日本が世界に誇る、印刷技術の結晶なのです。

普段、じっくりとお札を観察することは、あまりないと思います。
しかし、お札は身近に触れる芸術品のひとつ。そこには、さまざまな印刷技術が施されています。

2004年11月、ニッポンの顔が変わりました。
20年ぶりの紙幣変更です。

その主な目的は、紙幣偽造を防止し、円の信頼性を高めること。

日本の偽札生枚数は、米ドル札の1/300と言われ、偽造防止技術は世界最高水準を誇ります。

しかし近年、パソコンなどの性能向上により、精巧な偽札が増加。
こうした偽札に対抗するため、新紙幣にはさらに高度な印刷技術が施されています。

紙幣の真贋を確認する方法として「すかし」が最も一般的です。
日本銀行券では、白すかしと黒すかしを組み合わせて精巧な模様を作りだしています。

特に黒すかしは、政府の許可がなければ作ることができません。

新紙幣では、すかしと共に偽造防止の切り札になる技術として、一万円券と五千円券にホログラムが採り入れられました。これは紙幣の角度を変えると、模様や色彩が変化するというものです。

お手持ちのお札を確認してみてはどうでしょうか。
ホログラムの部分に桜模様と額面金額、「日」の文字を図案化したマークが表れるはずです。

印刷は、国立印刷局が開発した、専用の銀行券印刷機で刷られています。

この印刷機は、ドライオフセット印刷と凹版印刷が同時に行えるというもの。
凹版印刷で刷られた紙幣の金額部分は、指で触るとインキの盛り上がっていることが分かると思います。

インキの色についても、各種顔料とワニスを練り合わせ、独特の色合いを実現。
また、特殊発光インキやパールインキ、光学的変化インキなど特別なものも使われています。

特殊発光インキとは、紫外線を当てると発光するもので、印章部分に使われています。
左右余白の光沢ピンク色部分には、パールインキが使用されています。
お札を傾けると文字の色が変わる部分には、光化学インキが採用されています。

肖像画に関しても、極めて細密な凹版画線によって描かれています。

これは超細密画線と呼ばれ、1mmの中に11本の線が印刷されている部分もあります。
このため、わずかな違いでも表情が変化して見えるようです。

他にも、お札を傾けると額面数字が浮かび上がる潜像模様や、通常の印刷では再現不可能なほど小さいマイクロ文字など、さまざまな偽造防止技術が施されています。

紙幣の寿命は一万円券で約3~4年、使用頻度の高い五千円券と千円券は約1~2年程度。
国立印刷局は毎年30億枚ほどの新札を製造しています。
その全てに記番号や印章を印刷し、枚数を厳重に管理。

世界でも有数な信頼ある紙幣は、高度な印刷技術と徹底した製造管理により成り立っているのです。

最も身近な印刷物でありながら、その印刷技術にはあまり興味が持たれていないお札。

手に触れることができる高度印刷技術の名作を、ぜひ一度じっくり鑑賞してみてはどうでしょう。

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