Vol.35デザインキーワード: ゴシック体 サンセリフ書体 明朝体 ローマン書体

ゴシックの誤解 ~欧文書体について~

ひらがな、カタカナ、漢字、そしてアルファベット。
書体を知ることは、効果的な表現を知ることです。

近代印刷の始まりを告げた「四十二行聖書」。この書には後にゴシック体と呼ばれる書体が使用されますが、
それは私たちの知るゴシック体とは様相の異なるものでした。

ブラックレターと呼ばれるほど、縦線が太く印刷面が黒っぽく見えるゴシック体。

主に教会専用の典礼書体として使われていたものを、グーテンベルクは最初の金属活字として採用しました。

しかし、私たちが普段『ゴシック体』として慣れ親しんでいるものは、欧文で言えばサンセリフ書体に相当します。

サンセリフとは、起筆部や終筆部に付く爪状のセリフという線を持たない書体。

縦・横同じ太さの書体を指し、和文書体で言うゴシック体にあたります。

一般的に新聞や雑誌などの見出しや道路標識などに使用されるケースが多く、悪条件でも字形が判別しやすいのが特長。

サンセリフの代表的な書体として、「Futura(フーツラ)」や「Helvetica(ヘルベチカ)」などがあります。

Futura(フーツラ)

Futura(フーツラ)

ドイツの書体デザイナーが制作、1927年発売。
ラテン語で未来を意味し、簡素な印象や高い完成度から広く普及。

Helvetica(ヘルベチカ)

Helvetica(ヘルベチカ)

スイスの活字製造会社 Haas社が20世紀半ばに発売。
その後、ライノタイプ社が権利を引き継ぐ。

一方、和文書体で言う『明朝体』に近い欧文書体としてローマン書体(セリフ書体)があります。

こちらはセリフの働きにより、視線の水平移行が容易。
あまり眼に負担をかけず読むことができるため、長文の組版に向いています。

代表的なものとして、「Palatino(パラティノ)」や「Caslon(キャスロン)」などがあります。

Palatino(パラティノ)

Palatino(パラティノ)

優美なフォルムから、高級品の広告によく使われる。
発売されて半世紀以上たつ、スタンダードなローマン書体。

Caslon(キャスロン)

Caslon(キャスロン)

イギリスの活字制作者ウィリアム・キャスロンが18世紀に制作。
書体のバリエーションが多く、メーカーによってデザインが大きく異なる。

その他、欧文書体は「四十二行聖書」に採用されたゴシック体、文字の強調によく利用されるイタリック体、筆記体形状のスクリプト体、縦・横の線が同じ太さで角張ったセリフが付いたアンチック体などに分類できます。

ゴシック体

ゴシック体

イタリック体

イタリック体

スクリプト体

スクリプト体

アンチック体

アンチック体

ところで、同じ名前の書体が複数あるのをご存知ですか。

たとえば、アメリカ独立宣言の印刷初版を組むのにも使われた「Caslon(キャスロン)」なら、

「Adobe Caslon」
「ITC Caslon224」
「Big Caslon」

など。これは書体販売会社が、活字制作者の作った書体に近い書体を設計した際、その制作者にあやかって名前を付けたためです。

もちろん製造する会社が違うので、同じような名前でも違ったデザインの書体になってきます。

タイポグラフィの基本は、書体が醸す雰囲気をうまく演出することにあります。

優雅で柔らかいイメージを持つパリ発祥のファッションブランドに、厳格で力強いドイツ生まれの書体は向きません。
同じように最先端のITを謳ったシャープな広告に、伝統感のある古風な書体を使用すれば、先進的なイメージは壊れてしまいます。

その数は数千を超すと言われている欧文書体。
すでに、国内においても不可欠な存在です。

より有効な表現、効果的な印刷物を生み出すためにも、内容や雰囲気を考慮した書体選びはますます重要になっています。

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