Vol.31印刷キーワード: 顔料 染料

顔料と染料、その違いや特長。

色の素、顔料と染料。それは私達の生活を彩る素です。

前号のインクジェットプリンタの話でも登場した、顔料インクと染料インク。はたしてその違いや特長には、どのようなものがあるのでしょうか。
今回は、顔料と染料についてご紹介します。

顔料染料という言葉を初めて聞く方も多いかもしれません。

あまり馴染みがない言葉ですが、色の素になるもので、衣料や化粧品、印刷物など色がついてるものすべてに使われています。

そもそも顔料も染料も、見た目は色のついた粉末。
簡単な判別方法として、粉末を水や油などの液体に入れ、
溶けなければ顔料溶けるものを染料と呼んで区別しています。

この呼び名の違いは、両者の使い方の違いに由来するものです。

紀元前二万年以上前、古代の人類によって描かれたといわれる、洞窟の壁画。
この時に使われた絵具こそ、顔料の始まりです。

有色の土や木、貝殻などを燃やし、その灰を水や動物の油と混ぜ合わせることで、顔料インクの原形が生まれました。

彼らは、顔料を顔や身体に塗り、占いや呪術にも利用。
このことから「顔に塗る粉=顔料」と呼ばれるようになったという説もあります。

顔料の利用が広まるにつれ、原料となる有色の石や土は、王族や貴族などの権力者が所有する貴重品になっていきました。

その後、17世紀頃になると、顔料を人工的に作り出せるまでに技術が発展します。

一方染料の誕生は、洞窟の壁画よりずっと後の時代。
紀元前1500年頃だと言われています。

地中海沿岸のエジプトやギリシアなどで、貝の身から採れる液体を使い、貝紫という染物を作る技術が発達します。

この液体こそ染料なのですが、約1gの染料を集めるために数千個の貝を要することから、貝紫は帝王紫と呼ばれ非常に貴重なものでした。

またインドで発見されたインディゴ(藍)など、植物染料を使った染色技術も生まれます。

しかし、これら天然染料は産地が限られていたため、国によっては入手が困難。
そこで科学者たちは、人工的に染料を作りだすため研究を続け、その生成に成功します。

コールタールを原料とした、合成染料は1856年のモーブ(紫)、1868年のアリザリン(赤)を始めとし、現在までに1万種以上作り出されています。

顔料と染料は、性質にも大きな違いがあります。

粒子が大きく溶けにくい性質の顔料は、単独での着色は難しく、接着の役目を果たす展色剤(ビヒクルなど)が必要。

しかし耐久性、耐光性に優れ、着色する面の下地を覆い隠す効果もあります。また、色の諧調をはっきり表示できるため、文字が読みやすくなるなどの利点も。

これらのメリットから、印刷インキの90%以上に顔料が使用されています。

染料はというと溶ける性質から、繊維などにムラなく着染できることが特長。発色もよく、自然に近い色合いを出すことができます。

反面、顔料に比べると色褪せや変色が起こりやすく、着色物の繊維に吸着して染色を行うため、着色面が滲みやすいという点があげられます。

顔料と染料。色をつけるという面では同じ役目を果たす両者ですが、その性質はまるで違います。

どちらが優れているというのではなく、ケースに応じて使い分けるべきものなのです。

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